インタビュー

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「フルーツのファンになっていただきたい」新宿高野を支えるスタッフたち

新宿高野の店内に一歩足を踏み入れると、旬のフルーツに対するこだわりが隅々まで感じられるよう。うっとりするほど美しいフルーツが揃う売り場とレストランの裏側には、常にフルーツとお客様とのより良い出会いのために努力を続けるスタッフたちの姿がありました。
それぞれ違う立場から新宿高野を支えるおふたりから話をお聞きしました。

フルーツで病を予防する時代です

フルーツでフレッシュな一日をスタート!

「フルーツ文化を広く伝えていきたい。それが新宿高野の使命だと思っています」

取締役 人材開発室 室長 松本はるみさん

老舗としての伝統を守りつつ、常にフルーツを使った新しい商品の開発にチャレンジし続ける新宿高野。さらなる向上をめざし、新しい取り組みも行っている。

創業120周年をきっかけにスタートした社内研修「フルーツ塾」は、フルーツの販売に直接関わらないスタッフも含め、全社員がフルーツ専門家として知識を蓄えるという、これまでになかった目標を持って運営されているという。すでに3期目に入った塾の運営をまとめる、人材開発室の松本はるみさんに話をお聞きした。

「生果を扱う売り場スタッフは日ごろから自然とフルーツのことを学んでいけますが、ケーキやジャムなど加工品を扱うスタッフやパーラーのスタッフなど、各職種のスタッフからもっとフルーツについて勉強したいという声が以前からありまして。120周年を機に、改めて全員で基礎から勉強しよう、ということでスタートしました」

塾では1年間のスクール形式で、時期ごとの旬のフルーツについて学ぶ。「実際に産地を訪れて生産者の方々に話を伺う他、フルーツの由来、栄養価、レシピなどを総合的に学びます。また、今は新しい品種がどんどん出ていますので、多数の品種を集め、実際に味わい、フルーツを見極める技術を鍛えていきます」

フルーツの品種は近年ブランド化が進み、指名買いする消費者も増えている。その一方で、今も一般的な店はデザートのイチゴをすべて「イチゴ」として出す。しかし新宿高野では、専門店として、イチゴとして一律に括らず「とちおとめ」「あまおう」など、品種ごとに打ち出していく姿勢をとっている。塾でもこだわりをもって品種の勉強に取り組んでいるという。

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「こうして学んだことを、自分の言葉でいかに伝えるか、その表現を磨くための講習も組み込まれています。学んで終わりではなく、お客様にお伝えするのが重要なので」

フルーツ塾では試験も行われる。1年間の講義が終わると「卒業」。ただし、フルーツをテーマにした卒業論文があるという。
「論文を読むと、それぞれのスタッフが自分の仕事に生かしていっているということがわかります」

この研修は高い人気があり、順番を待ち望むスタッフが大勢いるという。
「事務系のスタッフからも参加したいという要望があり、それもいずれは実現したいですね。フルーツについて楽しく学べるし、いろんな部署のスタッフが参加するので横のつながりも強まり、一番楽しい研修だという評判なんです」

塾の講師を勤めるのは、フルーツの研究を続ける知識豊富な社内講師たち。経験と知識を継承していく、老舗ならではの取り組みと言える。

フルーツの楽しさ、良さを広く伝えていきたい。そんな思いから来る取り組みは、これに留まらない。

本店B1Fの一角では、一般向けのカルチャー教室「フルーツ誕生果教室」が定期的に開催されている。今のところ場所や人数の制限があるため広くはアナウンスしていないが、旬のフルーツの知識やレシピがわかる講義、品種ごとの食べ比べなどが体験できるとあって、すぐに予約でいっぱいになってしまう人気の教室だ。
「楽しい時間が過ごせるということで大変好評をいただいています。今後も少しずつ開催数を増やしていき、いずれはスクール化なども検討していきたいですね」

そのほか、専門学校や企業セミナーなどの要請で、社員を派遣し、フルーツの講義を行うこともあるという。

「フルーツ専門店として、お客様にフルーツを提供するだけではなく『フルーツ文化』を皆様にお伝えしていきたい。また皆様からもそうした期待を頂いていると感じておりますので、できる限りのことをしていきたいと考えております」

そんな松本さんからのメッセージは「多くの方に、ぜひ新宿本店にいらしていただきたい」ということ。「美しい宝石のようなフルーツの、姿、形、色、香りを、実際に感じていただきたいですね。そしてデザートが楽しめるフルーツパーラーや、バイキングを楽しんでいただけるフルーツバーもあります。また、フードフロアには、ケーキやジャムなど、フルーツを使ったオリジナルのアイテムを取り揃えています。ぜひ本店を訪れ、フルーツの良さにふれていただきたいですね」

「新宿高野には120年の伝統がある。おいしくて当たり前です」

フルーツアドバイザー 小池和義さん

小池さんは新宿高野に入社以来、フルーツに関わって43年のキャリアを持つベテラン。しかし「まだまだですよ。なにしろフルーツで43年というのは、43回しか巡りあっていない、ということですから」と笑う。

「フルーツは生ものですから個性があります。同じフルーツでも生産者によって違う。今日のフルーツと明日のフルーツも違う。だから日々勉強ですね。1年かけて苦労して作っているものですから、売るほうも毎日が真剣勝負です」

小池さんは43年間の販売と仕入れで鍛えた豊富な知識と経験を活かし、社内研修「フルーツ塾」で社内講師を勤める役割も負っている。また売り場でフルーツに関するコンサルティングをする「フルーツアドバイザー」として、接客も担当する。さらに、マスクメロンに精通した専門アドバイザーでもある。
マスクメロンショップでは1日刻みで食べごろを判定し表示をしているが、これは見極めが難しく、小池さんのように長年の場数を踏んだベテランしかできない。

「マスクメロンの見極めをできるのは本店でも3~4人に限られます。支店なら店長と副店長のみ。他の者にはさせない。それだけ責任を持っておすすめしているということです」

食べごろに責任を持つのは他のフルーツでも同じ。売り場では、今日なら今日、3日後なら3日後と、食べたい日に食べごろになるものを的確に選んでくれる。「一番おいしい時に召し上がっていただく。それが新宿高野からの提案です」と小池さん。

一番おいしいフルーツを届けたい。このこだわりは、バイヤーとしても発揮される。新宿高野では産地の選定から始め、特に腕のいいベテラン生産者を選出してフルーツ作りを委託している。そして栽培の努力を重ねる生産者と一丸となり、最高級のフルーツを生み出していく。

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「例えば洋ナシ。通常、洋ナシは無袋栽培(袋をかけない栽培)をする。しかし高野では、肌をきれいにするため有袋にし、なおかつ味を落とさないようにした。それをお願いするにあたって一番いいものを作る生産者数名のみに限定し、その方々からしか仕入れません。 また、沖縄には、こだわりを持って、他とは違う栽培をしているマンゴー作りの名人の方がいるんですが、マンゴーはその人からしか買わない。その人も自信がある本当の最高級品しか出してきません。ですから当店にあるマンゴーは、他の市場には出ない超特級品だけです」

当然、店内での品質管理も厳しく行われる。「朝、オープン前に全部チェックします。よくお客様に、店頭に出しているセットをこのまま送ったり持ち帰ったりしても大丈夫なのかと聞かれますが、自信を持って『はい』とお答えできる。他では店頭のセットは見本で、購入時に詰め替えるというところが多いのですが、うちでは開店前に全部済ませてあるわけです。またイチゴなどは朝出したものが夕方に痛んでしまうということもありますから、午後と夕方もチェックします。 ここまでやっているからお客様の信頼を得ていると感じています。120年の伝統というのはそういうことだと思っています」

新宿高野ブランドのフルーツへの熱意がこもる口調。特に、新宿高野の顔とも言えるマスクメロンのこととなると一層熱を帯びる。

「マスクメロンは栽培に100日~120日かかる。温室栽培ですからサウナ状態で、作業は1日2時間位しかできない。そして1本の樹で1個しか収穫しません。非常に苦労して作られる、だからこそ価値があるんです。
店頭に並ぶのは、その中でも仕入れ基準に合ったもののみです。形、ネット、香り、すべてをチェックし、少しでも基準を下回ったものは除く。それが高野の仕入れ基準です。
ですから当社で扱っている商品には、すべて高野のロゴが入っています。どこ産フルーツということではなく、『高野の』フルーツなんです。これが専門店。おいしくて当たり前です」

特にマスクメロンにこだわる理由がある。「マスクメロンは明治18年に新宿御苑で作られたのが日本での栽培の初めです。つまり地元生まれです。そして新宿高野は大正9年に販売を開始しました」

贈答品として定着したマスクメロンだが、改めて見直す機会は日常にはまずないと言える。しかし、マスクメロンショップには商品が並ぶだけでなく、マスクメロンができるまでの模型がディスプレイされ、また産地や生産者が写真や映像で紹介され、購入客にはもちろん、ウィンドウショッピングで訪れた客にも、マスクメロンが生まれるまでのストーリーを語りかけてくれる。 「まるで博物館みたいだと言われますね。ここに来て、新宿でメロンが生まれた、それを知っていただくだけでもいい。次にマスクメロンを見たとき、これは新宿で生まれたんだ、とひとつの話題になるでしょう。フルーツのそうしたエピソードを知ることで、ファンになっていただきたいと思っているんです」

「フルーツのファンがもっと増えてほしい」-これが小池さんの何よりの望みだ。その思いから、新宿高野が主催するカルチャー教室「フルーツ誕生果教室」の講師もつとめる。もっとフルーツの歴史や品種を知って、日常から楽しむ人が増えてほしいとの思いがある。

「フルーツのファン層がより広がってもらいたいという気持ちでやっています。それによって業界全体が元気になるといいなと。私どもはそのためのパイプ役でありたいと思っています」

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